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リーダーシップの旅に出ている彼。 『社会の役に立ちたい』 もがく、とある日本の若者。不定期に書評とか戯言とか。

【書評】ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

先日の読書会で取り扱った著書。

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

 

 

■読書会での一枚

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簡単にまとめを書いていく。

 

■著書

リード・ホフマン(Reid Hoffman)
リンクトインの創業者であり現在会長。
ペイパルの創業に関わったのち、2002年にリンクトインを創業。200を超える国と地域で3億人以上の会員を有する世界最大クラスのSNSに成長させた。
シリコンバレーベンチャー・キャピタル、グレイロック・パートナーズのパートナーも兼務し、エアビーアンドビー、フェイスブックフリッカー、ゼンガなどに投資している。
 
篠田真貴子(しのだ・まきこ)
東京糸井重里事務所取締役CFO。慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼーノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。2012年、糸井事務所がポーター賞一橋大学)を受賞する原動力となった。
 
■私の所感
 
R社は、一部実践している内容もあるため、目新しさはなかったものの、
リンクトインの徹底ぶり、公式に対応している点などはとても参考になった。
 
たいていの人事関係の本では「いかにして辞めないようにして長く働いてもらうか」という観点で説明されてることが多いが、
ALLIANCEでは数年で退職するのは当たり前で、退職する前提でどう一度入社した人と良い関係を築いていくかがまとめられている。
 
最近では日本でも終身雇用という考え方に無理があるという認識が少しずつ浸透してきた感はあるが、
企業を卒業した人のネットワークを活用するというところまでできている企業は極小なのではないだろうか。(いわゆる外資系がほとんど)
人材の流動性が高いシリコンバレーでは、日本よりもはるかにすぐに転職を考える人が多いために、
退職者との付き合いかたに関しても考え方が進んでいるようである。
 
著書の内容を一言で表すと、労働者と会社の新しい関係を提示している。
その新しい関係とは、
  • 会社を辞めても、個人と会社がつながり続ける
  • 会社は労働者が会社が辞めても成長できるような労働条件を提示し、
    労働者は会社が持続的に成長できるように労働力をコミットする
というものである。

本書ではこの関係をアライアンスと呼ぶ。
このアライアンスの関係が、今後の時代の労働者と会社の関係だと述べている。
 
■アライアンスという概念に思うこと
 
個人的に『アライアンス』という概念には賛成です。
著書でも述べているとおり、労働者と会社は、家族関係よりも提携関係(≒チーム)であるほうが健全だ。両社にとって大切なのは「期間を決めてお互いの成長にコミットする」ことだろう。
 
また、本書では、
アライアンスの関係でめざすべきは、会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させることではない。ある期間、一定条件のもとで整合性をそろえることである。
とも述べている。
「企業は労働者を尊重して労働者を成長させる場を提供する。労働者は企業が成長できるようにコミットする」
 
技術だけでなく、会社と労働者の関係も発展していかないと、ますます日本はグローバルな競争に太刀打ちできなくなってしまうでしょう。
深い信頼関係を気づいてこそ、人は頑張れるし、高い成果を出すことが可能になるのだと思います。
 
■目次
1、ネットワーク時代の新しい雇用
 
あなたは転職した。
今日がその出社日だ。新しい職場に着くと直属の部長が出迎える。
彼女は、ようこそ、これで「家族」の一員ね、手厚く歓迎してくれる。
この先長く勤めてくれたらうれしい、というようなことを言い、あなたを人事部に引き渡す。
そこでは、三か月の試用期間があることを説明される。
つまり、解雇される可能性があるということである。
今、あなたが目の当たりにしたのは、まさに今日の雇用関係の根底にある「すれ違い」だ。
雇用主と社員の関係は、このように「ごまかし」の上に成り立っている。
今日、真剣に雇用を保証しようなどという企業はほとんど存在しない。そのうえ、どれだけの期間あなたに勤めてほしいか、という点については曖昧な言い方しかしない。
会社の本音は「優れた」社員だけに残って欲しいのだ。
実はこの「あいまいさ」こそが信頼関係を壊している。
このような企業は社員側に忠誠を求めながら、会社側は何も約束しないというのだから。このようなやり方に対し、雇われる側の多くは、賭ける先を分散してリスクヘッジすることで応えてきた。
転職のチャンスがあればすぐに飛びつく。
今の会社へどれほど忠誠を語っていようと気にしない。このように雇用主も社員も、建前と行動が矛盾している。
そして、そのことに対して疑問を持つこともない。
それぞれの自己欺瞞のせいで、お互い相手を信頼できない。どれほど企業が安定してた時代を懐かしがり、社員が終身雇用を切望しようとも、もう引き返せないところまで世代は変わってしまった、
辞めた人とも良い関係を維持しておいて、会社にとっても元従業員にとってもメリットのあるようにする取り組みだけでなく、
在職期間中に退職するかもしれない前提でコミットメント期間を定める方法も解説されています
仮に転職することになったとしても、在職してくれている数年間で最速で成長してもらうのが双方にとってベスト。
 
転職に対してオープンに上司に相談してもらったほうが、その転職のためにどういったキャリアを積みたいかを双方で相談できてよい。
本人のやりたいことが実や社内でもできるかもしれない。
また、結論として退職することになったとしても、突然転職されてしまうよりも事前に相談を受けて年数の目処がついて
いたほうがずっといい。
面接の段階で弊社で働いたあとは何をしたいかを聞く。これによってキャリアパスの支援ができる。
 
2、コミットメント期間を設定しよう
 
雇用主と社員との長期的関係のために定期的に仕事を変えること。
これは、「ミッションを期限内に成し遂げることに専念し、そこに個人の信用をかけている」というコンセプトがもとになっています。
つまり、特定の期間、特定のミッションに対する会社と社員の道義的責任を具現化させ、この期間を積み重ねていくことで会社にとっても個人にとってもメリットが大きいとしているのです。
会社にとっては個人ごとの成功結果が目に見えることで会社へのインパクトが予測しやすくなりますし、個人にとっては会社で働くことで得られるメリットをより具体的に感じられることで「個人としてのブランド力」を高めることにつながります。
 
これは、MBO(Management By Objectives)の進化形と言ってもいいかもしれません。

【コミットメント期間の3つのタイプ】

①ローテーション型

工場のラインや大企業のホワイトカラーに代表される様々な箇所を数年ずつ経験していく方法。
社員がどの部署が自分に合うかを確かめる期間となる。
②変革型
社員ごとにパーソナライズされているのが特徴。
期間を一定に定めるというよりかは、特定のミッションを完遂することが重要視される。
内容は上司と本人で話し合って決める。

 
③基盤型
人生と会社の方向性が完全に一致しており、その人にとってその会社がキャリアや人生の基盤となっている状態。
会社での使命が自分の終生の仕事だと考えて、会社も同様にとらえる関係性。それぞれのメンバーがどの状態にあるのかを本人と話し合ったうえで判断していく。
 
3、コミットメント期間で大切なもの
4、変革型コミットメント期間を導入する
 
整合性を目指すには、「企業の目標と価値観」と「社員のキャリア目標と価値観」との間にある共通点を、マネジャーが意識的に探して明示しなければならない
 
社員の大切にしている価値観とそれぞれのありたい姿を知ることから始まる。
 
例えば、まず最初に、その人が尊敬する人物の名前を三人書き出してもらう。
次に、それぞれの名前の横にその人物について尊敬できる点を三つ書き出してもらう(合計で九つ)。最後に、その九つを、大切に思う順に一番から九番までランクづけしてもらう。
これで、その人の個人的な価値観のリストができあがる
 
ミッションと価値観を表す優れたステートメントは、一部の有能な人たちに強い整合性を感じさせる一方で、ほかの人たちには「この会社は自分に合わない」と気づかせるほど十分に具体的かつ厳密でなければならない     
          

自立したプレイヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネジャーと社員がお互いを信頼し相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。
変革型コミットメント期間の核心は、その社員が自分のキャリアと会社の両方を大きく変革させるような機会を得るという約束である。
 
要は1~5年(場合によってはそれ以上)の「その期間はここで働きます・雇います」の約束をします。
 
余談だが、
筆者は、すべての企業と個人にアライアンスが適用されるべき、とは言いません。起業家タイプの人―
起業家のように、考え、動く人。
筆者曰く、変化をもたらし、周囲をやる気にさせ、必ず仕事をやりとげる人。
かつ、
将来成し遂げたいこと、もしくは価値観が決まっている人にとって、
アライアンスはとても有効、かつ魅力的なモデルであると説明しています。
私は自分であれこれ考え、行動したいタイプなので、本書は共感ポイントが多かったですが、
当てはまらない方が読むと、こんなの無理でしょ、求めてないわ…というネガティブな感想で終わってしまうと思いました。
企業、個人に合わせて、雇用関係を考えないといけない時代なのかもしれません
 
5、社員にネットワーク情報力を求める
 
そもそもネットワーク力が高い人を採用する
積極的な姿勢で社外と情報交換するように促す。友人知人に聞くべき質問などを社内で蓄積していく。
 
・業界の方向性を決めるカギとなる技術のトレンド
・他社の現在の取り組みは?成功しているか?失敗か?
・顧客の心情について。どんな気持ちが彼らを動かしているのか?彼らはどう変わったか
・手を組むべき業界内のキーパーソンは?
・業界内の人材採用のトレンドは?
・業界への新規参入組はどんな人たちか?面白いことをしている企業はあるか?
p.133より引用
 
ただ情報をもらうだけではダメなので、
社外の人に何か聞くときには、上記のような質問への回答を自分たちでも用意しておく必要がある。
誰かが情報を得た時に、それが社内で共有されるようにしておくことも重要。
社内の連絡用ツールでアップされても読まれなければ無価値なので、打ち合わせのときなどに専用の時間をとってちょっとした情報が共有されるようにする
 
6、ネットワーク情報力を育てるには
 
ネットワークを強めるための制度をつくる
・社員のためにネットワーキング予算を設ける。社外の人との食事代など。
・社員による講演会の企画
・自社オフィスでのイベント開催制度を作っても利用されなければ意味がないので、
ネットワーキングの重要性を説明する、経営者が積極的に制度を利用してみせる、課題の相談ができそうな社外の人のリストをつくるなどをする。
 
7、会社は「卒業生」ネットワークを作ろう
 
卒業生ネットワークをつくり、退職した人ともいい関係を作っておくことは双方にとってメリットがある。
会社にとっては、やめた人から人材を紹介してもらえる、出戻りの率があがる、情報を教えてもらえる、顧客を紹介してもらえるなど。
退職者にとっては会社から転職先を紹介してもらえる、退職者同士のネットワークが使える、やめた企業から仕事をもらえるなど。
現役、退職した人の両方を含めたネットワークをオンラインでつくる、定期的にイベントを開催して食事代の費用を負担するなどのそれほど大きくない投資でもやる意義がある。
 
卒業生ネットワークに投資すべき4つの理由
1、優れた人材の獲得に役に立つ
2、有力な情報が得られる
3、顧客を紹介してくれる
4、「卒業生」はブランド・アンバサダー(自社ブランドの顧客の中で、その商品サービスに対してロイヤティが高く、友人・知人等に推奨伝播力のある人や有名人)である
 
8、「卒業生」ネットワークを活かすには
 
・「卒業生」ネットワークの参加者を決める
・ギブ&テイクの中身をはっきりと示す
・退職手続きを見直す
・現役社員と「卒業生」をつなげる
・卒業生ネットワークを売りにすることもできる
 
最後に。
この本にも「もしあなたのグローバル本社が社長個人の自宅と兼用ならば、
この卒業生ネットワークの育成に着手するには、気が早すぎるだろう」と書いてあった。
何事も分相応。