Someone Like You

リーダーシップの旅に出ている彼。 『社会の役に立ちたい』 もがく、とある日本の若者。不定期に書評とか戯言とか。

【書評】チームのことだけ考えた。

サイボウズ株式会社の青野慶久氏によるサイボウズの創業から現在までを綴った本。

今回はその書評。

 

現代的な組織論に挑戦していく過程と苦労が滲み出ている本。

 

■著者紹介:

青野慶久(あおの・よしひさ)
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市サイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。また2011年から事業クラウド化を進め、2015年11月時点で有料契約社は12,000社を超える。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ! 』(文春新書)がある。 (Amazonより)

 

■著書目次:

第1章 多様化前のこと

第2章 共通の理想を探す

第3章 会社のインフラを作る

第4章 多様性に対応した人事制度

第5章 制度を活かす風土を作る

第6章 多様化の成果

 

全254ページに渡り、サイボウズ社の遍歴から、多様性ある組織をどうやって実現するかの過程をたどっていく。 

 

■自分なりにまとめると。

 

組織論、というよりもチームワーク論という方がしっくりくる一冊。

チームとは何か。

ダイバーシティインクルージョンを地で行こうとしている組織とは、どんなものかを想像できる。

言葉の定義を大切にしている青野氏だからこそ、使われている言葉は平易なものであり、解釈が分かれないようなものになっている。

多様性を丁寧に紡いでいきながら、理想に向かうチームを作るエッセンス(と仮説)がちりばめられている。

一方、給与の決定方法、働く時間など、多様性が増してくることに対して継続的に、改善・調整が行なわれている風景も興味深い。

組織運営には答えがない中で、最適解を探し続けている姿勢には、参考になる部分が多くあるのではないだろうか。

 

事業の運営方法としては、単一サービス(グループウェア・コミュニケーションツール)だからこそのシンプル経営。その様子も垣間見れる。

 

■個人的に議論・意見交換したいこと

・制度、風土が多様性に対応して行ったときに、誰・どんな仕事を「評価」するのか?

多様性がある中で「共感を生み続ける」にはどうすれば良いか?

  → サイボウズ社は退職率が低いため、一度共感を得らればその後は問題ない?

サイボウズ社の「利益」の考え方についてどう考えるか?

  → サイボウズ社「理想を追いかけるためのエンジン」

多様性を求め続けることで失うことはないのだろうか?

 

■キーワード:

・「チーム」とは、何かの目標に向かって集まった組織体である

  → チームの定義は「達成すべき目標の共有」「メンバー間の協力と相互依存関係」「メンバーの果たすべき役割の分担」「チームの構成員とそれ以外の人の境界線」があること

 

・「人間は理想に向かって行動する」

  → 人々の行動はある「理想」と現実との間を埋めるということに集約される。社内外で生じる問題はすべて理想と現実のギャップであるととらえ、理想は何なのか?現実は?と見極めることで課題を遂行していく。チームの理想とは何か?この社員が考えている理想はなんだろう?

 

  → このギャップフィルを埋め続けていこうとする青野氏は、現在のサイボウズを築き上げてきたであろうことがわかるコメントが本書の中に散りばめられている。

人間は何かしらの理想と現実の差を抱えて生きている。現実として「空腹」である人は、理想として「満腹」になりたいと願う。そこに差がある。この問題を解決するために「食べる」という課題を設定して行動する。そして、現実は理想に近づき、問題を解決する。とてもシンプルな法則だ。

 

多様性を保つための「公正明大」「質問責任・説明責任」

  → 多様性を保つ、つまり100人いれば100名の個性を認める。

    そのために、社員の自立を求め、ルールとして「公正明大」「質問責任・説明責任」を課すことで、全員が互いを認めあえるプロセスを踏んでいる。

 

・チームワークの成果は「効果」「効率」「満足」「学習」で測定する

  → チームワークとは単なる作業の効率化ではなく、共通の理想に向かって役割分担をして臨むこと、そしてそれを通じ、効果、効率を高め成果をだし、構成員の満足度、学習度を高めること。

 

*本書内容(副題)

第1章 多様化前のこと

 ー創業期の苦労

 ー事業部制成果主義・・・失敗が続く

 ー離職率28%に マネジメント研修が愚痴大会に

 ー手当たり次第のM&Aで20億を使い果たす

第2章 共通の理想を探す

 ー基本法則を発見「人間は理想に向かって行動する」

 ー会社共通の理想は?

 ーグループウェアで命をかける

 ーチームワークは「効果」「効率」「満足」「学習」で測る

 ー理想の浸透には時間がかかる

 ー100人いれば100通りの人事制度を

 ー公正明大と自立

第3章 会社のインフラを作る

 ー事実と解釈は異なる

 ー問題解決メソッドは、共通のフレームワーク

 ー理想マップ・コンセプト・モチベーション

 ーもう公平性は目指さない。給与は市場性で決める

 ー新しい職場環境。長時間労働は必要ない

 ー仮想オフィス、フリーアドレス・・・

第4章 多様性に対応した人事制度

 ーライフスタイルに合わせた働き方。ウルトラ自由

 ー最長6年の育児介護休業制度

 ーウルトラワーク、副業自由、育自分休暇制度

 ー人事制度作りはおもしろい

第5章 制度を活かす風土を作る

 ー制度だけでは足りない

 ー制度と風土はセット。風土はメンバーの価値観のこと

第6章 多様化の成果

 ー離職率は激減。緊張感の維持には高い理想への共感が必要。

 ー採用力向上。女性比率向上。変わる業績マネジメント。

 ー売り上げ増と利益減

 ーキーストーン種を目指す

 ー多様性の追求で生まれるもの

 

読みやすく、若手人事には必読の一冊ですね。