Someone Like You

リーダーシップの旅に出ている彼。 『社会の役に立ちたい』 もがく、とある日本の若者。不定期に書評とか戯言とか。

はじめての転職

 

2009年に入社した(株)リクルート及び(株)リクルートマーケティングパートナーズを、本日2016年2月29日付で退職をし、

明日2016年3月1日より(株)トライフォートという会社で働くこととなりました。

 

約7年間、営業から始まり、営業推進、人事企画、採用、事業開発、事業企画、経営企画と様々な役割・役職を経て、

ハイパーゼネラリスト(広く浅い人)になりました。

 

今後はそれらのバックボーンをうまくミックスさせ、

社長を全面サポートする役割でベンチャー企業へ転身することにしました。

(要は何でも屋です。事業開発、組織開発、なんでもやります。)

 

将来的には、

COO/CHOの役割で会社を牽引し、関係する市場をグロースさせていく所存です。

 

決まってみれば、なんて苦労もなく、

むしろこれから何してやろうか、うずうずしているのですが、

自分でも、転身が決まるまでは結構時間がかかった印象です。

 

意思決定できなかった背景としては、

・結局自分は何をしていたいのか?(少なくともあと5年くらい)

・今の自分は何が好きなのか?(何をしている時間が最も楽しいのか)

これらの答えを自分なりにシャープに持てるまでに時間が必要だったのです。

 

意思決定を邪魔する要因はいくつかありました。

・過去の自分が決めた約束(起業するって言ってなかった?)

・選択肢の不確実性(安定を捨ててまで勝ち取りたいことって何?)

・何をするより、誰とするか(と思っても「縁」ってその辺には落ちていないもの)

これらに対して、明確に対峙・対応できる自分になるまで時間がかかりました。

 

たぶん3〜4年くらい、見えない敵、自分の中にいる自分と戦ってきました。

 

結局のところ、自分は、

「あなたがいてくれたおかげ」

といろんな場面で言ってもらえる、そんな人生を歩みたいんだと思っています。

 

そう思ってくれる人はどこにいるか。

それは一緒に汗水流した仲間・チーム・組織だろう。

ともに苦労をし、ともに喜びを分かち合ったからこそ、

この言葉にもより意味・重みが増してくる。

 

いい組織・いい集団を作り、

そこから多くの人が成長し、進化し、その場を巣立ち、その後もさらに進化し続ける。

そんな組織からは、常に多くの事業・サービスが生まれる。

このエコシステムこそが、社会に価値を出し続けることができる。

 

いい組織・いい集団を作るためには、

ビジョン・ミッション・バリュー・ルールが必要である。

それらがうまく噛み合ったとき、多くの価値が生まれる。

そんな渦中にいる人々は、最高の時間を過ごすことができたと、

生涯に渡って、自分を鼓舞し、幸せを実感できると信じています。

 

「あなたがいてくれたおかげ」

こう思ってもらえるためにも、

誰よりも努力し、誰よりも力をつけている必要がある。

誰よりも考えを巡らせ、身体を使い、真実を見続ける必要がある。

 

ビジネスという一つの競争ルールの中で、

絶えずいい組織を保ち続けるためにも、自分が率先して進化していく。

 

世の中は、絶えず変化している。

人間にその変化を止めることはできないが、

変化に対応し、さらに変化を推進することはできる。

 

今後の5年間は、

新しい組織にて、自分の成長と会社の成長を完全リンクさせ、

最高の組織を作るプロセスを、必死になって辿っていくつもりです。

勝手に「創業から次のステージへ。第2章の幕開け」とストーリーテリングするつもりです。

 

そのためにも、

組織のメンバーは、常に挑戦心を持ちながら、日々の仕事にチャレンジし、

組織のコアを生かした、事業・サービスをどんどん作り出し、

事業・会社をより大きくし、社会からも凄い会社と評価され、

「働いてみたい会社」「卒業生が活躍している会社」にしていこうと思っています。

 

そこまでたどり着いた時、

また新しい何かが見えてくることでしょう。

その時を楽しみにしながら。

 

 

通勤1時間半、がんばろ。

 

リーダーシップとは何か(2/2)

リーダーシップを考えてみる、後編シリーズ。

 *前半はこちら:リーダーシップとは何か(1/2) - Someone Like You

 

3、リーダーシップを身につける

 

  リーダーシップの基本的な姿勢や態度は、身に付けることが困難なテクニックなのかというと、個人的意見では、簡単ではないが時間をかけて根気よく取り組めば誰でも身に付けられるものだと思っている。例えば、100メートルを10秒以内で走ったり、宇宙に飛び立つロケットを設計したり、というようなことは誰にでもできることではない。生まれつき体力的・頭脳的に恵まれていることが前提で、努力に努力を重ね、さらにその中から選ばれた人だけが達しうる領域である。少なくともスポーツはその要素が大いに強い。

 一方、リーダーシップのスキルには、人並み外れた強靭な体力や優れた頭脳は必要ない。必要なものは、失敗を恐れない精神や、計画を立てて前向きに実行すること、多彩な個性を持った人と適切にコミュニケーションすること、そのぐらいである。従って、リーダーシップを身につけるには、かかる時間に個人差はあれど本人の努力次第で身に付けることが可能と考えている。
 その前提で、リーダーシップを身につける上で重要なキーワードがあると考えた。「強い自己信頼」「人間力の形成」「社会への貢献」この3つを挙げたい。リーダーシップを発揮する人間は、この3つにこだわり、行動し、形にすることで、自分や他人、社会に対して強い影響を与えることになる。


「強い自己信頼」
 自分を知り、自分を理解し、自分を好きであることが 「自己信頼」であることを指す。思想家であるエマソンの提唱した考え方である。 その状態になれて初めて、人間は自分を信頼することができ、 自らの進むべき道が見えてくる。 だから「一度信頼したら、断固としてその道を進め」と エマソンは言っている。彼のいう自己は狭い意味での自己・エゴではなく、真の自己、自分の中に住む普遍的な存在を指している。自己信頼をできる人間は、人間の付点的な境地を知っていて、自分の行動を信じることができる強い存在であると言っている。
 それではエマソンの言う「自己信頼」の状態にどうやって達することが出来るのか。 そのヒントが「自己懐疑」が起点になるのではないかと思う。自分の行動は本当に正しいか、 自分は今のままでいいのか、 自分は自分を裏切ってはいないか、 自分が真実だと思っていることは本当に真実なのか・・・ この問いの繰り返しが結果的に「自己信頼」を生み出すのではないか。考えれば考えるほど自分の行動は正しくない気がしてくるし、 一歩を踏み出そうとする度に毎回戸惑いが生じる。 これをやり続けると最終的には、自分は何もしない方がいいんじゃないか、みたいな気分になってくる・しかし、その捉えようのない不安を常に抱えておくことが実は大事なのではないかと感じるし、リーダーシップを探す旅の一番最初の風景を見ているようだ。
人間力の形成」
 私たちは寺子屋を通じて「人間力」を身につけてきた。世の中は様々な考え・見方であふれている。自分は常識があるから、それは常識に照らし合わせて正しいか否かを判断する。しかし、他の人が同じように思っているとは限らない。その違う考え方を認識・受容することができるかどうか。人間は本質的に矛盾だらけの存在であることを理解ながらも、どうしょうもなく、価値が無く、すべては無意味だとは思わずに、他人の違った考えも尊重・リスペクトして、人間の存在そのものに敬意を払うことができること。自分を含めた人、まわりの人々に対して、愛おしさを感じること。これが人間力を磨くことに繋がる。
多摩大教授の田坂広志氏は、人間力のことを「自分の心、相手の心、集団の心、その心の動きを感じ取る修行を通じて、人間力を高めることができる」と言っている。私たちが寺子屋を通じて学んできた歴史、芸術、哲学、教養。これらを学ぶことは、人の営みに対する理解と尊敬を深める方法の一つである。人間そのものを理解することにより、結果自らの人間力を身につけることにつながっていく。

 『論語』に曰く,「人の己れを知らざるを患えず,人を知らざるを患えよ」とある。それと対になって,「己れを知ること莫きを患えず,知らるべきをなさんことを求む」ともある。

他人が自分を認めないのは問題ではない。自分が他人を認めないほうが問題だ、という意味である。ものの捉え方には70億通りあるように、ものの表現にも70億通りある。自分の望み通りの反応が返ってきたとしても、実際に自分の望み通りに相手が思っているとは限らない。相手が自分を認めてくれているか、相手が自分をわかってくれているかを図る物差しはない。その状況や相手の価値観を理解した上で、いかにして自分をコントロールするか。自分にできることは、自分として自分なりの反応をするしかない。

 どんなことも、まず自分から。私は自分の人生を生きているのである。それを理解してこそ、人間力が培われていくのだろう。


「社会への貢献」
 自己信頼を持って、人間力を形成できたのち、何ができるようになるのか。それだけではリーダーシップを最大化するには心もとない。結果論ではあるがその真価を問われるのは「社会への貢献」にどれだけ人生を傾けられているか、なのではないかと思っている。ここでいう社会とは、マクロからミクロから大きな幅があっていいと思う。社会にとって何が問題であるかを理解し、その問題に対して自らの資源を費やすことで解決に向けて貢献をいかにできているのか。活動それ自体にはもちろん意味と価値はあるが、それ以上にその状態を考えることも意味がある。

 リーダーには、社会の一員としての自覚と、本当の豊かさを実現する社会イノベーションへの貢献が自然と求められている。社会に対するイノベーション、つまり、他の人や他の資源だけでは解決できなかった社会の問題を解消することが求められる。リーダーシップを発揮することで、己の可能性と限界、周囲の期待と不安を感じるとことができる。そして、イノベーションをおこすうえで必要な資源と資源の結合を有機的に引き起こすことを指南することができる。つまり、問題を解決するためのプロセスを、問題が解決された未来を、誰よりも鮮明に見えている状態になる。

 社会へ貢献すること、社会の問題を解決すること、そのために必要な行動を自らの意思の元、実行していくことができる。それ自体は、大きなインパクトはいらない。影響力はその時の時代や環境が決める。その動き出しそれ自体がその人のリーダーシップにはとても意味があり、その一人一人のリーダーシップの塊が、これからの時代には強く求められ、重宝されていくのだろう。それくらい社会は複雑に絡み合い、多様な様子を見せているということであろう。


 ここまで「強い自己信頼」「人間力の形成」「社会への貢献」これらが自らの中から見出せた時、リーダーシップを発揮していることをまとめてみた。リーダーシップを身につけることの起点は、すべては自分の中にあり、誰かに限定されているものではない。人間すべてに許された、人間の資質である。

4、リーダーシップを身につけた先に待っているもの

 ここまでまとめてきたとおり、リーダーシップは誰かの特別な力、先天的なものではなく、誰しもがいつからでも会得することができる。その道は険しいが、その苦難を乗り越えたからこそ、人間として得られるものが変え難いものになる。
 リーダーシップは,問題を解決することのために動き出すことである。そしてその問題の大小は問われない。自分ひとりでは、技能や裁量を超えて解決できないこと,あるいは解決してはいけないことを解決するために,技能がある、裁量を持つ人を動かして, 一緒に解決しようとしていくことでできる。

 ウォレン・ベニスの著書『リーダーになる』には、本当の自分を見つけること、そして育てることができればリーダーになれると言っている。その過程において「現状を打破し」「基本を理解し」「自分を知り」「世界を知り」「直感に従い」「自分を広げ」「混乱をくぐり抜け」「人を味方につけ」「未来を作る」これらを通過したとき、リーダーになれると説く。なるほど、確かにこの経験を積んでいく中で、自分の中のリーダーシップに気づくこと葉体感している。

 ここまでまとめていくと、一つの結論らしきものが頭をよぎる。それは、私たちは、自分たちの手で未来を作りたいのではないだろうか、ということである。誰かの作られた未来、計画書の中で生きていく人生よりも、自らのリーダーシップで見出していく未来の中に明るさや楽しさ、期待を感じているし、それを感じたいのではないだろうか。
 未来とは言葉を変えると「夢」である。リーダーは、自分だけでなく他人や組織、社会のそれらの夢を育てることに全力を注げる人なのではないだろうか。

 少し話がそれるが、野田氏の考える思想のひとつに「ノブレス・オブリージュ」がある。ノブレス・オブリージュとは貴族、あるいは高貴な者の義務と解釈されている。社会的地位の高い者はそれにふさわしい義務を負ってしかるべきであり、彼らは一般の人よりも多くの規範に従うなどの責任を担う。一方、日本には貴族階級が存在しない。民主主義の中ではノブレス・オブリージュの概念はなじみにくいかもしれないが、たとえ社会的な地位のない庶民でも、家族や近所のようなごく小さな集団でリーダーとしての地位と責任を負う機会がある。そういう意味では、誰もが直面せざるを得ない概念でもある。 
 リーダーシップを身につけた先、このノブレス・オブリージュが自らの糧になっている。高貴さや貴族性を身分や地位でなく個人の魂の輝きと捉えるならば、組織や集団の長のみならず、ありとあらゆる人にとってこの概念は精神的な支柱となり得る。私たちは人生において、いろいろな力をギフトとして授かっている。ギフトとは、自分で勝ち取ったと思っても、その大部分は周囲の人々の協力があってこそ得られたものである。このノブレス・オブリュージュの精神性を理解することは、ギフトにおける世界共通の原則を理解したことと同義である。それはもらったギフトは返さなくてはいけない。返す相手、それはギフトくれた相手にではなく、他の人や社会に、である。この循環こそが、リーダーシップが社会にもたらす価値であり、リーダーとして示したい姿勢である。ギフトを社会に返す「返礼の旅」の過程で、さらに社会のリーダーへと個人が成長していく。


 リーダーシップ。それは全人類のためであり、全人類のものである。そしてリーダーシップを発揮できた時、社会の中で生きる意味を見出せることになるだろう。

 

終わり。

 

リーダーシップとは何か(1/2)

唐突ではあるが、リーダーシップとは何か。

リーダーシップは、海外の大学・大学院ではそれ単独で単位があるくらい、

体系化されかつ重宝される人間的要素である。

 

これからの自分を考える上で、考えをまとめてみたい。

 *長いので、前半後半で分けてみる。

 

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 1、リーダーシップとは何か

 2、リーダーシップに対する誤解

 3、リーダーシップを身につける

 4、リーダーシップを身につけた先に待っているもの

1、リーダーシップとは何か


 世の中では、リーダーやリーダーシップという言葉が様々な使われ方をしている。

リーダーシップという言葉だけとってもまずその定義が難しい。

というのもこのリーダーシップという言葉が昨今、変容していると感じる。

以前は「組織を率いる人物に求められる組織統率力」というイメージがあった。

現在では、これに加えて「組織に所属するどの人物にも求められる主体性を持って仕事を進める力」という範囲までリーダーシップの定義が広がったと感じられる。

以前はリーダーシップを求められるのは一部の人であったが、現在はすべての人にリーダーシップが求められているのではないだろうか。


 過去のリーダーシップ論を遡って見ても、ウォレン・ベニスから始まり、ジムコリンズの『ビジョナリー・カンパニー』シリーズ、世界的哲学書である『7つの習慣』の著者であるフランクリンコヴィーやジョン・P・コッターのリーダーシップ論は、あまりにも有名である。

彼の言っていることは常に入れ替わっているかというと、決してそうではない。

また彼らは、リーダーシップとマネジメントを大別し、それぞれの特徴を整理している。

彼らの論文は今もなお企業活動において重要な考え方・通説として使い古されているし、今もなお多大な影響力を持ち続けているのは事実である。

 

前置きはさておき、リーダーシップとは何か、という問いに答えたい。

野田氏の言葉をそのまま借りると、リーダーシップとは「見えないものを見る旅」と言っている。

ある人が見えないものを見る。見えないものとは、現実には存在しないビジョンや理想。

そして、ある人は、その実現に向けて行動を起こす。著書では、村の外にある誰も渡ったことが無い「暗い沼」と表現されている。そこを渡ると、何があるのか、何が見えるのか、最初にそれを強く心に思った人。

つまり、「見えないもの」を見た人が、その気持ちに強く動かされて、暗い沼を渡り始めていく。

それが、リーダーシップの旅の始まりであり、その旅は、孤独な状態から始まる。自らの内なる声を聴き、それに動かされて自ら行動を選択し、行動を開始する。

人は、結果としてリーダーになっていくにすぎない。

リーダーは単なる役割であり、結果である。

しかし、沼を渡り始めた時点では、リーダーではない。


そんなリーダーの成長の過程としては段階があるとも言っている。

その段階を3つに分けており、
 ①リード・ザ・セルフ(自らをリードし)
 ②リード・ザ・ピープル(人々をリードし)
 ③リード・ザ・ソサエティ(社会をリードする)
と提示している。最初は、自らをリードする。

自分の心の声に突き動かされての行動している様を指している。

つまり、リーダーは、最初はリーダーではなかった。という事である。

裏を返せば、誰もがリーダーになる可能性を持っている。

もっと柔らかくいうと、リーダーは誰にでもなれるし、リーダーになる為に持っておくべきリーダーシップも、誰しもの中に眠っている。

但し、そのリーダーシップを自らが感じられるかどうかは、自分の考え方・行動の仕方によって大きく左右される、ということになる。

野田氏は「リード・ザ・セルフから始まるリーダーシップの旅は、一人では貫徹できない」と言っている。リーダーシップの旅の道中「このひとにならついて行きたい」というフォロワーが付いてくる。フォロワーは、その人に対して共鳴、共感、賛同を感じて、ついていく。

暗い沼を渡っている、その人が後ろを振り返った時、フォロワーの存在を知ることになる。その結果、沼を渡って「見合ないもの」を見る。その夢の実現に向かっていく過程で、夢が、自分からフォロワーへと共有化・同期化して広がり、自分の夢が、みんなの夢になっていく。そのフォロワーに共鳴、共感、賛同を得るには、戦略的思考、コミニュケーションスキルを磨く前に「魅力的な人間」であることが必要になる。この魅力的な人間になるための資質が、世に言う「リーダーになるためには」と言われる経験や技術のことを指すのだろう。すなわち、リーダーシップの旅は、究極の資質「人間力」を磨く旅といえる。

それでは、その人間力を磨くにはどうすれば良いのか。それについては、この後の章でまとめいきたい。誰にとってもリーダーシップは体感することができるものである。そして、そのリーダーシップを自分の身体が感じるためには「旅」が必要である。このことを前提にリーダーシップを考えていきたい。

 

余談ではあるが、最近私の周りでこの「リーダーシップとは何か?」という問いを考える機会がいくつかあった。

ひとつはNHK「リーダーシップ白熱教室」を夫婦で見たこと。この番組は、ハーバード大学ケネディスクールでの30年間続く人気教授の「リーダーシップ論」を公開録画しているものである。リーダーシップとはただ、実行することであると説いている。問題が発生すれば、その問題を抱えた人や事象と正面から向き合い問題のプロセスを探究し、答えを探し、実行する。立場が社長であれば、組織機能の問題に対して役員や幹部から問題の状況を聞き、ディベートする。問題の根本をとにかく掘り下げる。リーダーシップは物事の問題を解決するために自分や人々を牽引すること。「リーダー」という立場の人が率先してそれを行う思考をすれば良いのと同時にその周囲の人も、問題に対してリーダーシップを発揮しなければならないと言っていた。逆に、リーダーの立場の人間がそれを行っていないとするとその組織のリーダーは役割を発揮していないことと同等である。指示することや威張ることはリーダーシップとは何の関係がない。発言力があったり、権威があるからといってそれはリーダーシップではないと。夫婦でこの番組を見て、それぞれのリーダーシップ体験を考え、互いのリーダーシップ行動を共有しあうことができた。

 

もうひとつの機会は、他社の同世代の友人たちと宗教とアメリカ大統領の話について語り合っていたときだ。だいぶ濃い語り合いをしていたのだが、その中で「宗教社会におけるリーダーとは誰なのか」について会話が及んだ。その場でおもしろかった結論の一つに、現代のリーダーは「優秀な羊」であるとしたことだ。欧米や中東などの一神教世界の人びとにはとっては自明のことらしいのだが、彼らにとって理想のリーダーは本来「よき羊飼い」である。荒野で羊を牧する羊飼いと、人民を治めるべきと神からその使命を与えられたリーダーは、彼らの中で同一視されている。「羊」は「羊飼い」に率いられるべきものであり、いくら優秀であっても「羊」は羊であって「羊飼い」にはなれない。つまり羊は「本質的なリーダー」にはなれない。しかし、未来のリーダーであるべき自分たちは、本質的なリーダーである羊飼いではなくて「優秀な羊」であることを前提にリーダーシップを学ばなくてはならない、と思っているようだ。要は、リーダーシップを最初から選ばれた羊飼いにすべてを任せる時代は終わった、ということを言っていた。宗教とリーダーシップを絡めると話はさらに奥深くなり、議論の余地は更に広がっていくだろう。

 

しかし、宗教によってリーダーシップの捉え方が違い、そもそもの価値観が仮に大きく違っていたとしても、リーダーシップを発揮できた時、それをも凌駕して目的を達成できているはずである。

 

少し前の話ではあるが象徴的な話は、アメリカ合衆国第44代大統領のバラク・オバマ氏の話を振り返ってみたい。大統領選挙当時2008年頃のアメリカは熱狂していた。オバマ大統領が人々の心をつかみ、強大なリーダーシップを発揮できるのはなぜなのか。その答えは、オバマ大統領が民衆に対して「共感」を呼び起こすからにほかならない。「Change!」「We can!」というキーフレーズとともに、人種や宗教観という大きな壁を越えて、当時の停滞したアメリカを立て直す希望をアメリカ国民は見出していた。政治家というのは国民の代表であり、国家の反映とともに国民が安心し、快適に暮らせる国を作るための仕事を担う人である。そのトップに立つ人は、国民の総意を常に理解して反映させるとともに、長期的に国を発展させるために国民から理解を得なければならない。

 

当時、アフガン・イラク戦争、住宅・金融危機、人種・貧困・格差問題などオバマ新大統領が向かおうとしているアメリカ社会は多くの問題を有していた。アメリカ合衆国のトップである大統領は、3億人もの多種多様な人々の声に耳を傾け、その期待を一身に背負い、率いていく強大なリーダーシップが求められた。

 

ケネディ大統領以来と言われる高支持率を背景には、彼の能力や実績もあるが、やはり自分の生れ育ちを悩み抜き、成長してきた人格、まさにリーダーシップによるのだろう。オバマ大統領は自身の生い立ちからも、多くの人の共感をあつめていたという。黒人の父と白人の母の間に生まれ、インドネシアで育ち、ハワイ・NYで学び、シカゴで働いた体験は、必然的に自分のアイデンティティを問い続け、他者への共感を育んだのだろう。少なくとも私は、多くの考え・価値観があることが足かせになっている状態、結束が必要な当時のアメリカ政治を彼に任せたいと思うだろう。人種や宗教など、複雑な環境で育ったからこそ、人種や宗教にとらわれない素晴らしい演説が行われたと言われている。

 

国のリーダーとして国民からの支持を得るためには、国民の目線に立ち、国民が望んでいるものは何か深く理解し、実現に向けて具体的な政策をわかりやすく伝えることが必要になる。そしてリーダーとして、将来国はどのように発展すべきか、安心して暮らしていける明確なビジョンを伝えることも求められる。そのためには、信念や価値観から、日常の生活環境にいたるまで、役割としての一貫性をもたせなければならないはずだ。見かけだけ、演技での役割を担うだけであれば、一貫性を保ち続けるには限界があろう。自分の心の底から、身体の芯から、その価値観で生きてきたことが滲み出ることが絶対条件なのだろう。それらを見た国民は一人ひとり考える。この人がその役割として任せるに値するリーダーなのかと。

 

オバマ大統領は、「CHANGE」という一言に集約させることで、国民一人一人が「変化を望んでいる」ということに意識を集中させた。当時の国民が望んでいることを、象徴する一つのフレーズにまとめることで、国民の共感を得ることに成功した大きな例と言える。オバマ大統領は、これから述べていく中でまとめていきたい、理想のリーダー像に最もマッチした人の一人である。

 

2、リーダーシップに対する誤解 

 

言葉の定義はある程度していくものの、使途があやふやな分、世間では多くの使われ方をするリーダーシップというこの言葉。リーダーと言われた時に想像される人間像も、多種多様になる事が安易に想像できる。ドラッガーはリーダーシップに特化した著書を過去には出していない。彼の著書『マネジメント』の中で「リーダーの性格やリーダーシップ・スタイル、リーダーの特性などというものは存在しない」と明言し、リーダーの基本的特性の共通項を探し出すことなど不可能だと考えていたという。だからこそリーダーシップそれ自体で著書にしたためていないわけだ。それくらいリーダーシップの言葉の定義は、難解かつ複雑なのである。
 解釈が分かれ、誤解が生まれているリーダーシップという概念に対して、ひとつひとつ私なりの解釈を見出していきながら、リーダーシップの根本に近づいていきたい。

①「リーダーシップはトップのものである」という誤解
 リーダーシップが「トップや上位者にのみ求められている」という考えが存在する。多くの場合、私たちはリーダーという言葉を、ボスと同じ意味で使っている。リーダーシップとは権威の象徴や、それによる人間の優劣をつけるものだと思っている我々日本人は多い。
 しかし、トップにとって必要な要素として、リーダーシップは必要条件ではあるけれども十分条件ではない。リーダーシップがなくても組織のトップになることは多いのが事実である。『モチベーション3.0』の著者ピーターセンゲも「リーダーシップとは、タイトルや役職とは全く異なるものです。私は、リーダーシップという言葉の使われ方に、大いなる誤解があると考えています」と言っている。確かに組織の中でピラミッドの上に行けばいくほど,リーダーシップを発揮しやすい条件と裁量を与えられているから,リーダーシップがあるのが当たり前だからこそ、リーダーシップを発揮していないトップも目立つのだろう。
 おそらくこの誤解は、リーダーシップという言葉の語源が生んでいることもあるだろう。
文字通りの意味で言えば、英語の「Lead」という動詞は、「導く」という意味を持つ。日本語的にいうと「先導する」つまりみんなをリードする、となる。まさにトップでみんなを引っ張るという姿を想像できる。この「Lead」という言葉は、インド・ヨーロッパ言語を語源としているようだ。それが「Leith」という単語である。そして、その意味が「立ち上がり、一歩踏み出す」「境界線を越えて足を踏み出すこと」である。これがリードするという言葉の歴史的な意味である。言葉の意味をたどっても、この誤解が意味をなさないことが言える。

②「リーダーシップは他人を管理するもの」という誤解

上記①のイメージからも想像されるのだが、リーダーシップは誰かをまとめるためのもの、他人を管理するためのもの、というイメージを持っていることも多いだろう。いわゆるマネジメントと同じ意味合いで使われることが多く、リーダーシップを持つ人は、他人を管理する能力に長けており、他人をまとめる立場になる。他人を管理するためには、リーダーシップを持っていないとならない。そんな誤解であろう。実際、リクルートの営業職においても、グループマネージャ〜という管理職の下の職位に「リーダー」遠き、プレマネージャー的な意味合いで役職を置かれている。
 リーダーシップとマネジメントの考え方を、区別していく過程でこの誤解は解けるだろう。先のコヴィー氏は「ほとんどの組織は、マネジメントのやり過ぎ、リーダーシップのなさ過ぎである」と言っている。つまりマネジメント過多であると揶揄している。コヴィー氏としては、リーダーシップとはどちらの方向に向かって進むのかという方向性を指し示すことであり、マネジメントはその指し示された方向に向かって、能率・効率よく、管理・コントロールしていくことだと定義している。またコヴィー氏は、個人のリーダーシップに関して「多くの人たちは、梯子に登り始めて、それが掛け違いだったことに気づく。つまり、どこに梯子をかけるのかというのが私たちの中のリーダーシップであり、その梯子を能率・効率よく登っていくのがマネジメントの役割である」と説明している。多くの組織は、梯子の掛け違いに気づいていたとしても、そこには我関せず、いかにその状態で物事を効率的にクリアしていくか、しか考えていないというわけだ。よくいう枠の中で答えを探す正解主義的な意味合いに近い。そこにはリーダーシップは存在しない。マネジメントを行う立場の人間としても、自らビジョンを示したり、ビジョンを策定するよりも、与えられた目標をいかに振り分けながらやっていくことの方が多いと感じているのではないだろうか。
 このように考えると、マネジメントをする上で、リーダーシップは重要である一方、リーダーシップを発揮する上でマネジメントスキルの有無は大きく影響しないように見える。確かに、リーダーシップを発揮している瞬間やその場は他人への影響を与えていることは確かである。しかし、リーダーシップの本質は他人への影響力である前に,自分への影響力である。自分は何をするためにそこにいるのか,そのために何をしなくてはならないのかを,自分の頭で考えているかどうか。これに尽きるのではないだろうか。

③「リーダーシップは才能である」という誤解
 リーダーシップの能力・スキルは先天的なものである、という考え方はどこからともなく現れ、当たり前のような考え方として居座っている。きっとそれはいろんな誤解や、見えている現実が混ざり合って生まれた齟齬なのだろう。確かに小学生の頃から、リーダーシップを発揮している子供がいることも確かであるし、小さな頃から自らリーダーとしての役割を担い、その経験を踏んできた人はリーダーシップの本質に気づき、能力や習慣として会得していることもあるだろう。だからと言って、リーダーシップは生まれつきの才能である、と整理をしてしまう人は、リーダーシップの能力・習慣を身に付ける努力を放棄しているにすぎないと、私は考えている。例えば、ビジネススクールには「リーダーシップ」という科目がある。リーダーシップは生来の素質や才能ではなく、習得していくもの、もっというと突き詰めて考えていくこと。うまく組織を牽引して成果を出せなかったとしても、それは役割としてのリーダーに向いていないのではなく、単にリーダー経験の不足や突き詰めて考えられていないと反省すべきなのだろう。リーダーシップは後天的に会得できるものであり、概念を学ぶことで実践できることなのである。
 自分にとって、リードすべき方向はどちらなのか、そもそも自分は社会の中でどんな存在なのか、どんな存在になりたいのか。仮に、これらを考え続けることができるのであれば、才能なんて必要なくリーダーシップを発揮することができる。

 リーダーシップの先天性を語るときに、もう一点考えてみたいのが「カリスマ」という概念である。1920年代の社会学マックス・ウェーバーが提唱したカリスマという概念は、それ自体は、異常な個人が備えた天与の資質のことを指す。さらにカリスマ的支配という概念も提唱し、その資質を持つ個人に人々が情緒的に帰依することによって成立すると、社会支配形態を、合法的支配、伝統的支配というものと並列で語っている。
 なぜカリスマの話をしたかというと、リーダーシップというとどうしてもカリスマ的な要素を持っている人を期待し、心待ちにしていることも少なくはないということである。将来のビジョンを描く資質がリーダーに求められる時代になって出てきたときに登場したのが、カリスマ的リーダーシップ理論である。神から授かったような超人的な才能を保持する人間こそがカリスマ型リーダーであり、その才能を保持することで、リーダーは部下から大きな服従心を得ることで、問題をバッサバサ解決していく。

 確かにカリスマは危機を乗り越える強い力を持っている。しかし、本当に必要とされるリーダーは、時代によって変化するはずだ。リーダーだけ変化しなくていいわけがない。だからこそ、これからリーダーシップを語るときは、決してカリスマの存在だけを指しているわけではなく、リーダーのひとつの形・断片として捉えた方が、理解も進むだろう。

 

**


 ここまで、世の中に蔓延しているリーダーシップに対する誤解に対して、自分なりの解釈ではあるが概念の整理をしていく中で誤解を解消していった。リーダーシップの概念を理解したうえで、リーダーシップの身につけるために必要なことを考えてみたい。

 

後半へ続く: 

リーダーシップとは何か(2/2) - Someone Like You

 

 

【書評】チームのことだけ考えた。

サイボウズ株式会社の青野慶久氏によるサイボウズの創業から現在までを綴った本。

今回はその書評。

 

現代的な組織論に挑戦していく過程と苦労が滲み出ている本。

 

■著者紹介:

青野慶久(あおの・よしひさ)
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市サイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。また2011年から事業クラウド化を進め、2015年11月時点で有料契約社は12,000社を超える。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ! 』(文春新書)がある。 (Amazonより)

 

■著書目次:

第1章 多様化前のこと

第2章 共通の理想を探す

第3章 会社のインフラを作る

第4章 多様性に対応した人事制度

第5章 制度を活かす風土を作る

第6章 多様化の成果

 

全254ページに渡り、サイボウズ社の遍歴から、多様性ある組織をどうやって実現するかの過程をたどっていく。 

 

■自分なりにまとめると。

 

組織論、というよりもチームワーク論という方がしっくりくる一冊。

チームとは何か。

ダイバーシティインクルージョンを地で行こうとしている組織とは、どんなものかを想像できる。

言葉の定義を大切にしている青野氏だからこそ、使われている言葉は平易なものであり、解釈が分かれないようなものになっている。

多様性を丁寧に紡いでいきながら、理想に向かうチームを作るエッセンス(と仮説)がちりばめられている。

一方、給与の決定方法、働く時間など、多様性が増してくることに対して継続的に、改善・調整が行なわれている風景も興味深い。

組織運営には答えがない中で、最適解を探し続けている姿勢には、参考になる部分が多くあるのではないだろうか。

 

事業の運営方法としては、単一サービス(グループウェア・コミュニケーションツール)だからこそのシンプル経営。その様子も垣間見れる。

 

■個人的に議論・意見交換したいこと

・制度、風土が多様性に対応して行ったときに、誰・どんな仕事を「評価」するのか?

多様性がある中で「共感を生み続ける」にはどうすれば良いか?

  → サイボウズ社は退職率が低いため、一度共感を得らればその後は問題ない?

サイボウズ社の「利益」の考え方についてどう考えるか?

  → サイボウズ社「理想を追いかけるためのエンジン」

多様性を求め続けることで失うことはないのだろうか?

 

■キーワード:

・「チーム」とは、何かの目標に向かって集まった組織体である

  → チームの定義は「達成すべき目標の共有」「メンバー間の協力と相互依存関係」「メンバーの果たすべき役割の分担」「チームの構成員とそれ以外の人の境界線」があること

 

・「人間は理想に向かって行動する」

  → 人々の行動はある「理想」と現実との間を埋めるということに集約される。社内外で生じる問題はすべて理想と現実のギャップであるととらえ、理想は何なのか?現実は?と見極めることで課題を遂行していく。チームの理想とは何か?この社員が考えている理想はなんだろう?

 

  → このギャップフィルを埋め続けていこうとする青野氏は、現在のサイボウズを築き上げてきたであろうことがわかるコメントが本書の中に散りばめられている。

人間は何かしらの理想と現実の差を抱えて生きている。現実として「空腹」である人は、理想として「満腹」になりたいと願う。そこに差がある。この問題を解決するために「食べる」という課題を設定して行動する。そして、現実は理想に近づき、問題を解決する。とてもシンプルな法則だ。

 

多様性を保つための「公正明大」「質問責任・説明責任」

  → 多様性を保つ、つまり100人いれば100名の個性を認める。

    そのために、社員の自立を求め、ルールとして「公正明大」「質問責任・説明責任」を課すことで、全員が互いを認めあえるプロセスを踏んでいる。

 

・チームワークの成果は「効果」「効率」「満足」「学習」で測定する

  → チームワークとは単なる作業の効率化ではなく、共通の理想に向かって役割分担をして臨むこと、そしてそれを通じ、効果、効率を高め成果をだし、構成員の満足度、学習度を高めること。

 

*本書内容(副題)

第1章 多様化前のこと

 ー創業期の苦労

 ー事業部制成果主義・・・失敗が続く

 ー離職率28%に マネジメント研修が愚痴大会に

 ー手当たり次第のM&Aで20億を使い果たす

第2章 共通の理想を探す

 ー基本法則を発見「人間は理想に向かって行動する」

 ー会社共通の理想は?

 ーグループウェアで命をかける

 ーチームワークは「効果」「効率」「満足」「学習」で測る

 ー理想の浸透には時間がかかる

 ー100人いれば100通りの人事制度を

 ー公正明大と自立

第3章 会社のインフラを作る

 ー事実と解釈は異なる

 ー問題解決メソッドは、共通のフレームワーク

 ー理想マップ・コンセプト・モチベーション

 ーもう公平性は目指さない。給与は市場性で決める

 ー新しい職場環境。長時間労働は必要ない

 ー仮想オフィス、フリーアドレス・・・

第4章 多様性に対応した人事制度

 ーライフスタイルに合わせた働き方。ウルトラ自由

 ー最長6年の育児介護休業制度

 ーウルトラワーク、副業自由、育自分休暇制度

 ー人事制度作りはおもしろい

第5章 制度を活かす風土を作る

 ー制度だけでは足りない

 ー制度と風土はセット。風土はメンバーの価値観のこと

第6章 多様化の成果

 ー離職率は激減。緊張感の維持には高い理想への共感が必要。

 ー採用力向上。女性比率向上。変わる業績マネジメント。

 ー売り上げ増と利益減

 ーキーストーン種を目指す

 ー多様性の追求で生まれるもの

 

読みやすく、若手人事には必読の一冊ですね。

 

 

 

【書評】ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

先日の読書会で取り扱った著書。

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用

 

 

■読書会での一枚

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簡単にまとめを書いていく。

 

■著書

リード・ホフマン(Reid Hoffman)
リンクトインの創業者であり現在会長。
ペイパルの創業に関わったのち、2002年にリンクトインを創業。200を超える国と地域で3億人以上の会員を有する世界最大クラスのSNSに成長させた。
シリコンバレーベンチャー・キャピタル、グレイロック・パートナーズのパートナーも兼務し、エアビーアンドビー、フェイスブックフリッカー、ゼンガなどに投資している。
 
篠田真貴子(しのだ・まきこ)
東京糸井重里事務所取締役CFO。慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼーノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。2012年、糸井事務所がポーター賞一橋大学)を受賞する原動力となった。
 
■私の所感
 
R社は、一部実践している内容もあるため、目新しさはなかったものの、
リンクトインの徹底ぶり、公式に対応している点などはとても参考になった。
 
たいていの人事関係の本では「いかにして辞めないようにして長く働いてもらうか」という観点で説明されてることが多いが、
ALLIANCEでは数年で退職するのは当たり前で、退職する前提でどう一度入社した人と良い関係を築いていくかがまとめられている。
 
最近では日本でも終身雇用という考え方に無理があるという認識が少しずつ浸透してきた感はあるが、
企業を卒業した人のネットワークを活用するというところまでできている企業は極小なのではないだろうか。(いわゆる外資系がほとんど)
人材の流動性が高いシリコンバレーでは、日本よりもはるかにすぐに転職を考える人が多いために、
退職者との付き合いかたに関しても考え方が進んでいるようである。
 
著書の内容を一言で表すと、労働者と会社の新しい関係を提示している。
その新しい関係とは、
  • 会社を辞めても、個人と会社がつながり続ける
  • 会社は労働者が会社が辞めても成長できるような労働条件を提示し、
    労働者は会社が持続的に成長できるように労働力をコミットする
というものである。

本書ではこの関係をアライアンスと呼ぶ。
このアライアンスの関係が、今後の時代の労働者と会社の関係だと述べている。
 
■アライアンスという概念に思うこと
 
個人的に『アライアンス』という概念には賛成です。
著書でも述べているとおり、労働者と会社は、家族関係よりも提携関係(≒チーム)であるほうが健全だ。両社にとって大切なのは「期間を決めてお互いの成長にコミットする」ことだろう。
 
また、本書では、
アライアンスの関係でめざすべきは、会社と個人の目標をあらゆる面で完璧に一致させることではない。ある期間、一定条件のもとで整合性をそろえることである。
とも述べている。
「企業は労働者を尊重して労働者を成長させる場を提供する。労働者は企業が成長できるようにコミットする」
 
技術だけでなく、会社と労働者の関係も発展していかないと、ますます日本はグローバルな競争に太刀打ちできなくなってしまうでしょう。
深い信頼関係を気づいてこそ、人は頑張れるし、高い成果を出すことが可能になるのだと思います。
 
■目次
1、ネットワーク時代の新しい雇用
 
あなたは転職した。
今日がその出社日だ。新しい職場に着くと直属の部長が出迎える。
彼女は、ようこそ、これで「家族」の一員ね、手厚く歓迎してくれる。
この先長く勤めてくれたらうれしい、というようなことを言い、あなたを人事部に引き渡す。
そこでは、三か月の試用期間があることを説明される。
つまり、解雇される可能性があるということである。
今、あなたが目の当たりにしたのは、まさに今日の雇用関係の根底にある「すれ違い」だ。
雇用主と社員の関係は、このように「ごまかし」の上に成り立っている。
今日、真剣に雇用を保証しようなどという企業はほとんど存在しない。そのうえ、どれだけの期間あなたに勤めてほしいか、という点については曖昧な言い方しかしない。
会社の本音は「優れた」社員だけに残って欲しいのだ。
実はこの「あいまいさ」こそが信頼関係を壊している。
このような企業は社員側に忠誠を求めながら、会社側は何も約束しないというのだから。このようなやり方に対し、雇われる側の多くは、賭ける先を分散してリスクヘッジすることで応えてきた。
転職のチャンスがあればすぐに飛びつく。
今の会社へどれほど忠誠を語っていようと気にしない。このように雇用主も社員も、建前と行動が矛盾している。
そして、そのことに対して疑問を持つこともない。
それぞれの自己欺瞞のせいで、お互い相手を信頼できない。どれほど企業が安定してた時代を懐かしがり、社員が終身雇用を切望しようとも、もう引き返せないところまで世代は変わってしまった、
辞めた人とも良い関係を維持しておいて、会社にとっても元従業員にとってもメリットのあるようにする取り組みだけでなく、
在職期間中に退職するかもしれない前提でコミットメント期間を定める方法も解説されています
仮に転職することになったとしても、在職してくれている数年間で最速で成長してもらうのが双方にとってベスト。
 
転職に対してオープンに上司に相談してもらったほうが、その転職のためにどういったキャリアを積みたいかを双方で相談できてよい。
本人のやりたいことが実や社内でもできるかもしれない。
また、結論として退職することになったとしても、突然転職されてしまうよりも事前に相談を受けて年数の目処がついて
いたほうがずっといい。
面接の段階で弊社で働いたあとは何をしたいかを聞く。これによってキャリアパスの支援ができる。
 
2、コミットメント期間を設定しよう
 
雇用主と社員との長期的関係のために定期的に仕事を変えること。
これは、「ミッションを期限内に成し遂げることに専念し、そこに個人の信用をかけている」というコンセプトがもとになっています。
つまり、特定の期間、特定のミッションに対する会社と社員の道義的責任を具現化させ、この期間を積み重ねていくことで会社にとっても個人にとってもメリットが大きいとしているのです。
会社にとっては個人ごとの成功結果が目に見えることで会社へのインパクトが予測しやすくなりますし、個人にとっては会社で働くことで得られるメリットをより具体的に感じられることで「個人としてのブランド力」を高めることにつながります。
 
これは、MBO(Management By Objectives)の進化形と言ってもいいかもしれません。

【コミットメント期間の3つのタイプ】

①ローテーション型

工場のラインや大企業のホワイトカラーに代表される様々な箇所を数年ずつ経験していく方法。
社員がどの部署が自分に合うかを確かめる期間となる。
②変革型
社員ごとにパーソナライズされているのが特徴。
期間を一定に定めるというよりかは、特定のミッションを完遂することが重要視される。
内容は上司と本人で話し合って決める。

 
③基盤型
人生と会社の方向性が完全に一致しており、その人にとってその会社がキャリアや人生の基盤となっている状態。
会社での使命が自分の終生の仕事だと考えて、会社も同様にとらえる関係性。それぞれのメンバーがどの状態にあるのかを本人と話し合ったうえで判断していく。
 
3、コミットメント期間で大切なもの
4、変革型コミットメント期間を導入する
 
整合性を目指すには、「企業の目標と価値観」と「社員のキャリア目標と価値観」との間にある共通点を、マネジャーが意識的に探して明示しなければならない
 
社員の大切にしている価値観とそれぞれのありたい姿を知ることから始まる。
 
例えば、まず最初に、その人が尊敬する人物の名前を三人書き出してもらう。
次に、それぞれの名前の横にその人物について尊敬できる点を三つ書き出してもらう(合計で九つ)。最後に、その九つを、大切に思う順に一番から九番までランクづけしてもらう。
これで、その人の個人的な価値観のリストができあがる
 
ミッションと価値観を表す優れたステートメントは、一部の有能な人たちに強い整合性を感じさせる一方で、ほかの人たちには「この会社は自分に合わない」と気づかせるほど十分に具体的かつ厳密でなければならない     
          

自立したプレイヤー同士が互いにメリットを得ようと、期間を明確に定めて結ぶ提携関係である。マネジャーと社員がお互いを信頼し相手に時間と労力を投入し、結果的に強いビジネスと優れたキャリアを手に入れる。
変革型コミットメント期間の核心は、その社員が自分のキャリアと会社の両方を大きく変革させるような機会を得るという約束である。
 
要は1~5年(場合によってはそれ以上)の「その期間はここで働きます・雇います」の約束をします。
 
余談だが、
筆者は、すべての企業と個人にアライアンスが適用されるべき、とは言いません。起業家タイプの人―
起業家のように、考え、動く人。
筆者曰く、変化をもたらし、周囲をやる気にさせ、必ず仕事をやりとげる人。
かつ、
将来成し遂げたいこと、もしくは価値観が決まっている人にとって、
アライアンスはとても有効、かつ魅力的なモデルであると説明しています。
私は自分であれこれ考え、行動したいタイプなので、本書は共感ポイントが多かったですが、
当てはまらない方が読むと、こんなの無理でしょ、求めてないわ…というネガティブな感想で終わってしまうと思いました。
企業、個人に合わせて、雇用関係を考えないといけない時代なのかもしれません
 
5、社員にネットワーク情報力を求める
 
そもそもネットワーク力が高い人を採用する
積極的な姿勢で社外と情報交換するように促す。友人知人に聞くべき質問などを社内で蓄積していく。
 
・業界の方向性を決めるカギとなる技術のトレンド
・他社の現在の取り組みは?成功しているか?失敗か?
・顧客の心情について。どんな気持ちが彼らを動かしているのか?彼らはどう変わったか
・手を組むべき業界内のキーパーソンは?
・業界内の人材採用のトレンドは?
・業界への新規参入組はどんな人たちか?面白いことをしている企業はあるか?
p.133より引用
 
ただ情報をもらうだけではダメなので、
社外の人に何か聞くときには、上記のような質問への回答を自分たちでも用意しておく必要がある。
誰かが情報を得た時に、それが社内で共有されるようにしておくことも重要。
社内の連絡用ツールでアップされても読まれなければ無価値なので、打ち合わせのときなどに専用の時間をとってちょっとした情報が共有されるようにする
 
6、ネットワーク情報力を育てるには
 
ネットワークを強めるための制度をつくる
・社員のためにネットワーキング予算を設ける。社外の人との食事代など。
・社員による講演会の企画
・自社オフィスでのイベント開催制度を作っても利用されなければ意味がないので、
ネットワーキングの重要性を説明する、経営者が積極的に制度を利用してみせる、課題の相談ができそうな社外の人のリストをつくるなどをする。
 
7、会社は「卒業生」ネットワークを作ろう
 
卒業生ネットワークをつくり、退職した人ともいい関係を作っておくことは双方にとってメリットがある。
会社にとっては、やめた人から人材を紹介してもらえる、出戻りの率があがる、情報を教えてもらえる、顧客を紹介してもらえるなど。
退職者にとっては会社から転職先を紹介してもらえる、退職者同士のネットワークが使える、やめた企業から仕事をもらえるなど。
現役、退職した人の両方を含めたネットワークをオンラインでつくる、定期的にイベントを開催して食事代の費用を負担するなどのそれほど大きくない投資でもやる意義がある。
 
卒業生ネットワークに投資すべき4つの理由
1、優れた人材の獲得に役に立つ
2、有力な情報が得られる
3、顧客を紹介してくれる
4、「卒業生」はブランド・アンバサダー(自社ブランドの顧客の中で、その商品サービスに対してロイヤティが高く、友人・知人等に推奨伝播力のある人や有名人)である
 
8、「卒業生」ネットワークを活かすには
 
・「卒業生」ネットワークの参加者を決める
・ギブ&テイクの中身をはっきりと示す
・退職手続きを見直す
・現役社員と「卒業生」をつなげる
・卒業生ネットワークを売りにすることもできる
 
最後に。
この本にも「もしあなたのグローバル本社が社長個人の自宅と兼用ならば、
この卒業生ネットワークの育成に着手するには、気が早すぎるだろう」と書いてあった。
何事も分相応。